体力・栄養・免疫学雑誌 第19巻 第1号 2009年 目次
[巻頭言]
政権交代
檀上和真 ・・・2
[ORIGINAL ARTICLE]
Prevalence of multiple risk factors and the effect of lifestyles on these factors in young Japanese workers.
Takao KURIYAMA, Takahiro USAMI, Takashi MUTO, Kazumoto KIMURA, Yuichi MIWA ・・・3-7
Long-term administration of sterigmatocystin with drinking water in Helicobacter pylori-infected aged Mongolian gerbils enhances carcinogenesis in the gastric mucosa
Masahiro KUSUNOKI, Junichi MISUMI, Kazuo AOKI, Tatsuo SHIMADA, Noritaka MATSUO, Hideaki SUMIYOSHI, Naoyuki EBINE, Takeshi YAMAGUCHI, Akihiro OKAMOTO, Hidekatsu YOSHIOKA ・・・8-16
[原著]
日本人若年女性の牛乳不耐症状とカルシウム摂取,骨量の関連
別所京子,小板谷典子,髙田和子,太田壽城 ・・・17-21
大学柔道選手の強化合宿による身体的・精神的疲労の出現とその 関連について
-血液生化学検査値,POMSを用いた検討-
小山田和行,梅田孝, 山本洋祐,田辺勝, 小嶋新太,古賀稔彦, 樗木武治,矢野智彦, 野村忠宏,谷本歩実, 山田保,中路重之 ・・・22-31
呼吸器モデルを用いた安静時代謝量測定におけるフード法の精度に関する検討
熊江隆,伊藤千夏, 古泉佳代,金子佳代子 ・・・32-41
《巻頭言》
政権交代
弘前大学大学院医学研究科社会医学講座 檀上和真
平成21年8月30日に政権選択を最大の焦点とした第45回衆議院議員総選挙の投票が行われた。即日開票の結果、民主党が過半数の241議席を大きく上回り、300を超える議席を獲得して政権奪取を果たした。野党が衆院選で単独過半数を獲得し、政権交代を果たしたのは戦後初めてである。歴史的な政権交代劇である。 翌日の新聞に「自民党の衰退の最大の理由は時代と環境の変化に合わせた自己改革ができなかったことだ。東西冷戦後の国家目標を定められず、保守政党としての新たな理念や使命を示さなかった。米ソ対立と経済成長の時代にあっては個人後援会を基盤とした派閥連合体が民意を吸い上げ、官僚を巻き込んで利益を調整する政治システムが有効に働いた。」「民主党はこうした自民党の行き詰まりを批判し、子ども手当や高速道路無料化など家計支援策、多様な候補者を立てる選挙戦術で有権者の不満を吸い上げた。」とある。
最近になり、世間で騒がれている「医療崩壊」も、この政権交代の一因とされている。そして、民主党の政権公約(マニフェスト)の医療の分野では「後期高齢者医療制度を廃止し国民皆保険を守る。」「医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する。」とある。しかも、その中には「OECD平均の人口あたり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする。」ともある。
現在の高齢化が進んでいる社会では、医療は政治における重要な課題であり、注目されるのも当然と考えられる。ところで、医療崩壊は何が原因だったのだろうか。様々な原因が考えられるが、当然、現在までの政策が一番の原因と考えられる。その原因は医療現場での声が政治に生かされていなかった面がある。それは政治を行っている立場だけの問題ではない。日々の診療に追われている現状では無理もないが、従来、医師は政治に興味を示さず、主張をしてこなかった。これも原因の一つであることは否定できない。
政権交代が行われた今、政治の傍観者ではいけない時代が来たのではないかと思う。なぜなら、民主党は政権公約(マニフェスト)で示した工程表に従って、政権を進めることになる。だが、「選挙用」政権公約(マニフェスト)にこだわり、今までの流れを断ち切ることにより、医療を含んだ国民生活が不安定になってはならない。反対に、政権公約(マニフェスト)が「選挙用」であり、全く、実行されないようであれば今までと何も変わらない。
一つ身近な例として、公約「医師養成数を1.5倍にする。」を考えてみる。医師不足の現状を考えると、歓迎されるべき公約であることは間違いない。しかし、現在の医学教育は一般の系統講義から複雑化された臨床実習があり、教員の負担は以前よりかなり増えている。しかも、教員の数は減っている現状もある。単純に政権公約(マニフェスト)どおりに学生数を1.5倍に増やしたらどうなるだろうか。医療教育現場の崩壊もありうる。この点を教育現場の立場からしっかり訴えることも必要となるであろう。そのためには政治に関心を持ち、政治に関わり合いを持つことが必要である。 今は「政権交代」の時でもあり、自己啓発の時でもあると言えるのではないか。
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