体力・栄養・免疫学雑誌 第20巻 第1号 2010年 目次
[巻頭言]
科学研究の発展を望んで
高橋一平 ・・・2
[ORIGINAL ARTICLE]
Relationship Between Sense of Coherence and Depression among Workers: A Large-Scale Epidemiologic Survey in Tsukuba Science City
Tadahiro UMEDA, Shinichiro SASAHARA, Yusuke TOMOTSUNE, Satoshi YOSHINO, Kazuya USAMI, Takeshi HAOKA, Yuichi OHI, Hiroyuki NAKAMURA, Ichiyo MATSUZAKI ・・・3-10
Effects of 2 Hour Training on the Appearance of Physical and Mental Fatigue in Professional Soccer Players
Yoshimasa SUDA, Kiyonori YAMAI, Takashi UMEDA, Ippei TAKAHASHI, Masashi MATSUZAKA, Kazuma DANJO, Manabu TOTSUKA, Shigeyuki NAKAJI ・・・11-20
[原著]
女子大学長距離陸上選手のオフシーズンの身体的・精神的コンディションの特性と運動後の変化について
-安静時及び運動負荷後の包括的メディカルチェックの結果から-
山本博,梅田孝,水野増彦,石井隆士,千葉義信,瀬尾京子,小山内弘和,椿原徹也,徳田糸代,宮澤眞紀,檀上和真,中路重之 ・・・21-30
同一の運動トレーニング習慣を有する集団における最高酸素摂取量,最大脂質酸化量,および最大脂質酸化量を示す運動強度の関連
高木俊,小西真幸,緑川泰史,坂本静男,勝村俊仁 ・・・31-37
農業地域類型区分別における性別・年齢階級別の身体的特徴
熊谷貴子,李相潤,北宮千秋,佐藤厚子,橋本淳一,鈴木孝夫,中路重之 ・・・38-45
[投稿規定] ・・・46-47
《巻頭言》 科学研究の発展を望んで
弘前大学大学院医学研究科社会医学講座
高橋一平
2010年のノーベル賞受賞者が発表され、化学賞に鈴木章北海道大学名誉教授と、根岸英一米国パデュー大学特別教授の2人の日本人が決まりました。2000年以降でみると物理と化学の2つの部門だけですが、日本人受賞者は合わせて10人となり、ほぼ毎年1人が選出されるペースです。
従来は不可能と考えられていた、2種類の有機化合物を、金属のパラジウムを仲介役(触媒)に使って結合させる「クロスカップリング」と呼ばれる化学反応をそれぞれ独自に発見し、医薬品製造やエレクトロニクス分野で、さまざまな新しい物質の合成を可能にした功績が評価されました。
わが国の科学研究は長い間、応用研究中心で基礎研究が弱いと指摘されてきました。しかし、応用重視の中にあっても優れた基礎研究が着実に行われてきたことが今回の受賞をもたらしたと考えられます。
鈴木章先生は、受賞インタビューで「はじめからノーベル賞を取るとは思っていなかったし、そんな反応が起きるとは思っていなかった」、また「資源のない日本が生き延びるためには、頭を使う創造的な分野が大事」と述べていました。資源の乏しいわが国が生きる道は今後も科学技術立国と考えられます。しかし、研究費に占める政府負担割合はもともと先進国で最低ですが、近年さらに低下しています。鈴木章先生は高木義明文部科学相らを表敬訪問した際、高木文科相が「励みと勇気を与えてくれた」とたたえると「教育とサイエンスは短期間で成果が出ない。長い目で見ていただき経済的、精神的サポートをお願いします」と要望したと聞きます。
一方、根岸氏は1996年学会誌に「発見の条件」というタイトルで巻頭言を書き、自身の経験から10項目の要因を挙げています。
1. serendipity つまり運
2. 新しく奇想天外ながらも正しい仮説
3. 夢と目標
4. 新分野、新天地のsystematic exploration
5. 正しい価値判断
6. やってみるというアクション
7. 豊富な知識
8. 豊富なアイデア
9. Needs思考
10. optimism
日本のような資源が無く“人”と努力によりできる“知識”しかない国では科学研究が重要と考えられます。上記の先生方の偉業を祝福しつつ、これに学び、皆様の今後の研究の益々の発展・増進に期待する次第です。
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