体力・栄養・免疫学雑誌 第21巻 第3号 2011年 目次

[巻頭言]

一念岩をも通す

梅田孝 ・・・160


[ORIGINAL ARTICLE]

Change in Stress-coping Ability of Employees on Medical Leave Due to Depressive Disorder During Return-to-Work Program

Takeshi HAOKA, Yusuke TOMOTSUNE, Kazuya USAMI, Satoshi YOSHINO, Shin-ichiro SASAHARA, Hidetoshi KANEKO, Naoki KOBAYASHI, Naoaki SHO, Atsushi TERAO, Akira KIKUCHI, Ichiyo MATSUZAKI ・・・161-167


The Relationship Between Health Practices and Sense of Coherence in Tsukuba Science City Workers

Yuichi OHI, Yusuke TOMOTSUNE, Satoshi YOSHINO, Shinichiro SASAHARA, Takeshi HAOKA, Kazuya USAMI, Naoaki SHO, Akihiro SEKI, Naoki KOBAYASHI, Hidetoshi KANEKO, Ichiyo MATSUZAKI ・・・168-175


[原著]

A市公立中学生の健康管理意識と健康状態・日常生活行動およびQOLとの関連

五十嵐世津子,一戸とも子,中路重之,梅田孝,高橋一平,松坂方士,菅原典夫,檀上和真 ・・・176-182


飼育環境ストレスが自由行動ラットの心拍スペクトル解析を用いた心臓自律神経活動に及ぼす影響の検討

熊江隆 ・・・183-190


大学女子バレーボール選手の安静時の健康状況とトレーニングによる身体的・精神的コンディションの変化について -血液生化学検査値と心理テストによる分析-

斎藤一雄、梅田孝、一柳昇、古賀稔彦、矢野智彦、小川武史、宮澤眞紀、高橋一平、松坂方士、船橋浩一、中路重之 ・・・191-200


慢性期嚥下障害患者に対するリハビリテーションにおけるNutrition Support Team介入の効果

樋園和仁、登田可奈枝、中野真由美、本田昇司 ・・・201-207


大学長距離ランナーにおけるα-アクチニン3 (ACTN3)遺伝子多型と10,000m走レース時の血中乳酸濃度およびレース記録との関連性についての検討

黄仁官,別府健至,大本洋嗣,石井隆士,水野増彦,上田大 ・・・208-215


[座談会]

古賀稔彦とスポーツ選手のコンディショニングについて語る

古賀稔彦、梅田孝、高橋一平、佐々木英嗣、中路重之 ・・・216-222


[第20回体力・栄養・免疫学会大会抄録]

保育士養成課程学生対する咀嚼教育の有用性

○今井久美子,坂口早苗,坂口武洋 ・・・223-225


介護福祉士養成課程における「死の教育」の現状と課題

○小櫃芳江,坂口早苗,坂口武洋 ・・・226-229


小学校新学習指導要領による保健領域の授業づくり―禁煙教育―

○坂口早苗,坂口武洋 ・・・230-233


生涯学習を対象とした健康意識調査

○田村和美,坂口早苗,坂口武洋 ・・・234-236


キャッチフレーズを用いた講義方法(授業法)

○柴田明佳,荻原利彦,高本雄治,佐藤ひとみ,長田貴子,中野哲,近藤陽一 ・・・237-240


DNAマイクロアレイ技術を用いた桑葉の血中脂質改善作用のメカニズム解明

○小島尚,小林征洋,宮澤眞紀 ・・・241-243


フード法による安静時代謝量測定の精度について -ヒューマンカロリーメーターとの比較検討-

○山本満,海老根直之 ・・・244-246


大学生のダイエットサプリメントの利用実態について

○栗山孝雄,安藤清香,五十嵐彩 ・・・247-249


腸内細菌と体脂肪の関連について

○渡邉清誉,本田勝義,矢野智彦,米田勝朗,三輪孝士,和田尚子,伊東良,小川武志,梅田孝,中路重之 ・・・250-252


メタボリックシンドロームと睡眠に関する検討

○大久保礼由,佐藤真樹,梅田孝,兼板佳孝,大井田隆,中路重之 ・・・253-255


特別講演1 健康と栄養に関するマスコミの役割

中原英臣 ・・・256-258


睡眠時無呼吸症候群モデルマウス作成と脳Glucose代謝の研究

○仁科正実,鈴木正彦,松下和弘  ・・・259-260


一般地域女性における口腔内環境が骨密度に及ぼす影響

○高橋一平,伊藤治幸,須田芳正,岩間孝暢,工藤うみ,狭戸尾真梨子,北川直子,塚本利昭,梅田孝,中路重之 ・・・261-263


一般住民におけるコレステロール値が骨密度に及ぼす影響

○赤池あらた,梅田孝,野村忠宏,松田基子,松本秀彦,有賀玲子,谷川涼子,浜野学,中路重之 ・・・264-266


脊椎可動域と身体機能の関係

○岩崎宏貴,梅田孝 ,檀上和真,田辺勝,樗木武治,柏尚裕,浜田菜穂子,船橋浩一,鈴木隆,小野睦,藤哲,中路重之 ・・・267-269


大学短距離選手の生活環境の違いが栄養素摂取状況と強化合宿による主観的疲労度の変動に及ぼす影響

○熊江隆,鈴川一宏,水野増彦 ・・・270-272


リツキシマブ,化学療法が奏効した寒冷凝集素症の1例

○佐分利能生 ・・・273


手指における寒冷血管拡張反応と温度感覚に関する研究

○朱文龍,田井村明博,管原正志 ・・・274-277


水温の違いによる寒冷血管拡張反応とその評価に関する検討

○管原正志,田井村明博 ・・・278-281


ロコモティブシンドロームと身体機能の関連

○佐々木英嗣,梅田孝,岩渕健輔,佐藤弘道,谷本歩実,徳田糸代,徳安秀正,山本博,中路重之 ・・・282-285


岩木健康増進プロジェクト参加者における職種及び労働時間が好中球機能に及ぼす影響について

○岩根かほり,上野裕一,小山田和行,黒岩純,竹石洋介,田中充洋,千葉義信,奥村俊樹,梅田孝,中路重之 ・・・286-289


ラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)を用いたスピルリナ成分のアレルギー抑制作用の検討

○浦修,山本悠有里,林修 ・・・290-292


ラットにおける低酸素トレーニングが肺血管透過性に及ぼす影響

○原健太,石橋祐理子,鈴木英悟,樫村修生 ・・・293-296


糖代謝が好中球機能に及ぼす影響

○齋藤百合子,福井真司,小西裕之,笠井里津子,甲斐知彦,大里怜子,石橋剛士,梅田孝,中路重之 ・・・297-299


一般住民におけるHelicobacter pylori感染とアレルギー性疾患の関連

○松坂方士,倉内静香,小枝周平,澄川幸志,椿原徹也,熊谷貴子,古賀稔彦,遠藤哲,下山克,坂本十一,梅田孝,中路重之 ・・・300-302


水道給排水管路内壁から発癌物質-Ⅱ

○松下和弘,仁科正実 ・・・303-305


自然派ファンデーションに含有されるミネラル量に関する研究

○大森佐與子 ・・・306-308


東京都S区における,壮年期を対象とした基本健康診査

○梶忍,熊江隆,樫村修生 ・・・×


保育園5・6歳児の園内活動と身体活動量に関する研究

○泉秀生,町田和彦 ・・・309-310


児童における食育について

○永嶋久美子,荒木美穂,坂口早苗,坂口武洋 ・・・311-314


ホスピタリティのある心豊かな食卓への試み

○高橋ユリア,津田謹輔 ・・・315-317


特別講演2 学校のこれから

~震災後の安心・安全と幼小中一貫~

○熊坂伸子 ・・・318-319


SOCと目標達成に関する研究

○平井康仁,大井雄一,道喜将太郎,鈴木 瞬,金子秀敏,小林直紀,関昭宏,商真哲,羽岡健史,梅田忠敬,宇佐見和哉,林美貴子, 友常祐介,吉野聡,笹原信一朗,松崎一葉 ・・・320-322


成人期におけるSOC変化の可能性に関する研究

○小林直紀,鈴木 瞬,道喜将太郎,平井康仁,金子秀敏,関昭宏,商真哲,大井雄一,羽岡健史,梅田忠敬,宇佐見和哉,林美貴子,友常祐介,吉野聡,笹原信一朗,松崎一葉 ・・・323-324


個人のストレス対処能力と定年退職前後の精神的健康度の変化に関する研究

○商真哲,道喜将太郎,鈴木瞬,平井康仁,金子秀敏,小林直紀,関昭宏,大井雄一,羽岡健史,宇佐見和哉,友常祐介,吉野聡,笹原信一朗,松崎一葉 ・・・325-326


いのちの電話相談における無職・失業者の相談状況について

○金子秀敏,鈴木瞬,道喜将太郎,平井康仁,小林直紀,関昭宏,商真哲,大井雄一,羽岡健史,梅田忠敬,宇佐見和哉,林美貴子,友常祐介,吉野聡,笹原信一朗,松崎一葉 ・・・327-329


心温計を用いた日常的コンピューター操作の変化とうつ病スクリーニングに関する研究

○笹原信一朗,羽岡健史,金子秀敏,道喜将太郎,鈴木瞬,平井康仁,小林直紀,関昭宏,商真哲,大井雄一,梅田忠敬,宇佐見和哉,友常祐介,吉野聡,望月昭英,松崎一葉 ・・・330-331


老人保健施設入所者へのハンドマッサージ施術が及ぼす心理的・生理的効果の検討

○小川奈美子,黒田久美子,三宅直之,小河原聡,山口理恵,町田和彦 ・・・332-333


韓国一施設利用者の血清生化学検査,メンタルヘルスの4年間の推移

○信太直己, 町田和彦 ・・・334-336


韓国高齢者福祉施設入居者のQOLと唾液中ホルモンとの関係

○源田智美,信太直己, 片桐千佳,町田和彦 ・・・337-338


リワークプログラムの身体活動に対する効果の検討

○鈴木瞬,道喜将太郎,平井康仁,金子秀敏,小林直紀,関昭宏,商真哲,大井雄一,羽岡健史,梅田忠敬,林貴美子,宇佐見和哉,友常祐介,吉野 聡,笹原信一朗,松崎一葉 ・・・339-341


脂肪細胞の脂肪分解反応に及ぼす新規カテキン型ポリフェノール複合体Oligonolの効果

○小笠原準悦,北舘健太郎,西岡浩,藤井創,櫻井拓也,木崎節子,石橋義永,炭谷由計,石田均,井澤鉄也,大野秀樹 ・・・342-344


[記事] ・・・345

[学会則]

[投稿規定]



《巻頭言》 一念岩をも通す

弘前大学大学院医学研究科社会医学講座

梅田孝


 本年8月に本学会が21回目を迎え、本学会の歴史と全く同じ経緯でたどる私の研究者人生もようやく20年が経過し、21年目に突入しました。この20年は早かったのか?遅かったのか?と自問自答すれば、時間が目まぐるしく経過し、今の1か月あるいは2カ月が小学生の頃の1週間くらいの感覚で過ぎ去った?ような気がしています。

 私が弘前大学にお世話になり始めて早13年、菅原和夫先生(当講座前教授)、中路重之先生(当講座現教授)のご厚意により、ここまでスポーツ医学の研究に没頭させていただき、多くのことを学び、経験させていただきました。また、これ以前を合せた20年間の研究生活のなかで、常に私の心の中には研究に対するブレることない一つの信念、あるいは理念とも言うべきものが形成され、これを礎に日々研究生活を送ってきたと感じています。また、このブレない理念は菅原・中路両先生から授かった研究者としての最良の教え、財産であると感じています。

 20年前、私は大分大学・故倉掛重精先生に菅原・中路両先生にご紹介いただきました。また、その後、少しずつ先生方が実施される調査、研究をお手伝いさせていただくようになりました。そして、数年後に正式に菅原組とも言うべき研究グループの末席に居場所を作っていただきました。そのなかで、私が両先生に幾度となくご教示いただき感銘を受けたお話が「行動する前に頭でっかちになってあれこれ悩んでもしょうがない、まずは行動を起こすこと」、「スポーツ医学の研究課題、解決すべき問題はスポーツ現場にあること」、「医学は実学、スポーツ医学の研究成果はスポーツ現場に返せてこそ真の価値があること」という3つのことでありました。この20年間、私は様々な競技種目の数多くアスリートを対象としたスポーツ医学の調査、研究を行い、現在もこれを継続しています。また、私が行ってきた全てにおいて、私は必ずこの3つの教えを念頭に調査、研究を計画、実践してきました。

 具体的には、まずは研究、調査を開始する以前に、スポーツ現場の主役である選手、指導者と十分に議論し、「競技を実践していくなかで現状としてどういう問題、課題が存在するのか?」、「それに関して選手、指導者が健康管理、コンディショニングに関して何を知りたいのか?」、「計画、実行しようとする調査、研究に何を求めているのか?」を明確に導き出します。次に、それに対して我々が「求められている答えを導き出すためにどのような計画を立て、どのような方法を用いるべきであるか?」、「どのような答えを出せるのか?」、あるいは「実行しようとしている調査、研究で導き出せる結果には限界があること」を選手、指導者に提示し再議論します。そして、お互いに理解し合意できた時点で調査を計画、実行し、その結果から選手、指導者が求めている答えを抽出し、個人あるいはチームに対して適切な健康管理方法、コンディショニング方法を助言、指導するというものであります。

 我々が所属する大学は研究機関であり、研究成果に重きを置かれるのは致し方ないような気もします。しかし、私は前述した3つの教えを礎にこの20年間の研究生活を送って来ました。また、これは偶然の賜物かも知れませんが、ここ数年は学会発表や学術論文の掲載という研究面の成果だけでなく、対象となった個人やチームが目的とする大会で最高のパフォーマンスを発揮し、勝利や記録の更新に貢献することができました。

 自らが行う研究に対してブレない信念、あるいは理念を持ち続けることは非常に難しいことかも知れません。また、私が行ってきた研究面以外の成果がたまたま得られたものである可能性も否定できません。しかし、「一念岩をも通す」という言葉があるように、私たち研究者が研究活動をライフワークの一つとし、自らの興味や関心、実行力を持ち続け活動していくためには、研究に対するブレない信念や理念を持ち続けることも非常に重要なことであると思います。私は今後も菅原・中路両先生に授かった3つの教えを持ち続けて行くことがより良い研究の実践と成果獲得に繋がることを信じ、スポーツ医学に関する研究活動とアスリートに対するサポート活動を実践していきたいと考えています。

 最後になりましたが、本学会設立の主旨の一つとして若手研究者の育成が挙げられます。また、私が以上述べさせて頂いたことは、私自身の私的見解、経験であるとも思われます。しかし、本学会に関わりこれから体力学、栄養学、免疫学の研究者を志す若手の研究者の皆さんには、研究を研究成果の獲得のためだけのものとして終わらせるのではなく、必ずやその成果を研究対象者や社会に還元するという高い理念を持ち、研究活動に取り組んでいただくことを願っております。